伝えづらいことを柔らかくする
「クッション言葉」の効果
「クッション言葉」をご存知でしょうか。
重要なことや伝えづらいことの前に、
文字通り「衝撃を和らげる」ために使うのがクッション言葉。
実は私は20代の後半(2000年代)、
携帯電話の故障受付でテレオペをやっていました。
その時に研修で習ったのがクッション言葉でした。
例えば私の部署では、
「携帯を拾ったので、持ち主を教えて欲しい」
というようなお問い合わせも受け付けていました。
とはいえ見ず知らずの人に個人情報を伝えるのは御法度。
正解としては、警察に届けてもらい、
警察から電話をいただき、警察経由で持ち主に返してもらいます。
その際に
「こちらでは受け付けられないので警察に届けてください」
と端的に伝えてしまうと
「せっかく親切に電話してやったのに!」
と、文字通りせっかくの親切が仇になってしまいます。
そんな時にはこう伝えます。
「そうなんですね。実は警察経由でしかお伝えできないので、
お忙しいところすみませんが、お近くの交番に届けていただけないでしょうか」
赤字の部分が「クッション言葉」です。
「そうなんですね」と共感した上で、
「お忙しいところすみませんが」と入れる。
これだけでイメージは全然違ってきます。
電話のプロによるコンクールで、
言葉選びの難しさと大切さを知る
これを思い出したのが、先日NHKで放送されていた
「電話応対コンクール」。
なんと、今年で70回目を迎えるそうです。
私が見た回は、
・旅行会社の設定で
・得意先から、不在の社員に宛てた電話を受け
・内容を要約し
・自社の社員に伝える
というのを3分でやるという技能を競っていました。
「●●さんはいらっしゃいますか」
という電話に対して不在の旨を伝えるわけですが、
「●●は外出しております」
ではなく、
「●●は、あいにく外出しております」
とひと言加えるだけで印象は違ってきます。
また、先方に対しても
「●●はあいにく外出しておりますが、
もしよろしければ、伝言を承りましょうか」
とひと言加えると、さらに印象はアップ。
そのほかにも
「私でよろしければ」
でもいいですよね。
このパートの時に審査員が頭をひねった表現が
「お急ぎのようでしたら、私が承ります」
というもの。
審査員としては、
「受け手が、急ぎって言われると伝えづらい」
と思うのではないかというのが、首をひねった理由。
確かに、緊急ではないなあ~と気を遣わせてしまったり、
逆に「急いでるから電話したんだけど。とっとと伝えて」
と思うせっかちな人もいるかもしれませんもんね。
では文章での「クッション言葉」とは?
先日、文章でのクッション言葉の使い方がよくわからない、
というご相談を受けました。
基本的には、相手のことを思いやること、
そして読みやすくすることが挙げられ、
特に、読みやすさの面では「強弱や抑揚を付ける」ことで、
読み手を飽きさせない効果が高くなります。
一番わかりやすいのが、接続詞の使い方。
とても簡単な例になりますが、例えば…
私は昨日スカイツリーに行きました。
ランチはイタリアンに行きました。
メニューはパスタセットを頼み、お腹いっぱいになりました。
自分のためにバッグを買い、娘のお土産にソラカラちゃんのキーホルダーを買いました。
それぞれに接続詞を付けると、
私は昨日スカイツリーに行きました。
まずランチを食べにイタリアンへ。
パスタセットを頼み、お腹いっぱいになりました。
次に自分のためにバッグを買いました。
最後は娘のお土産にソラカラちゃんのキーホルダーを買いました。
短い文章なので、違いがわかりづらいですが、
もしこれが長い論文だとしたら、
「第一に、第二に、第三に」と「どこからどこまでがひとつの話か」
というのを示してあげると、読み手が混乱しなくなります。
毎回、ブログを書いていて、
「どうやったら伝わるか」ということを第一に考えながら、
日本語の難しさを日々感じます。
でも考えれば考えるほど、相応しい言葉が見つかるような気がして…
やはり日本語は面白く、探求することが辞められませんね。