ライターの増田有香です。
休みはもっぱら録りためたドラマ鑑賞をしているのですが、
たまたま今日は「大奥」と「おっさんのパンツが何だっていいじゃないか」の2本を見て、
ともに「性別を考える」というテーマが共通していたので、いろいろ書いてみようと思います。
①男女が逆転、よしながふみ版「大奥」
引用元:https://www.nhk.jp/static/assets/images/tvseries/
ご存知の方も多いと思うのだが、実は私はしらなかったのが、NHKのドラマ版は「男女逆転」ということ。
原作は漫画家のよしながふみさん。脚本は森下佳子さん。
この漫画、なんと2004年の作品なんですね。
舞台は徳川吉宗の時代。
赤面疱瘡という、男しか罹らない病が流行った江戸では、貴重なお世継ぎを獲得するために、
女性が将軍となり、大奥を男子が務めていた。
吉宗ももちろん男性。こちらはドラマ版では冨永愛さんが演じ、
なんともすらっとしたスタイルとアジアンテイストの顔立ちが、まあ着物に合うこと。
というところから私は見始めたのですが、単純に男女が入れ替わって面白いね~
てな話ではなく、その時代、その性別で生まれてしまい、運命に逆らえない人間らしさも描いている。
考えてみれば、世継ぎは生まなくてはいけないし、政治も行わなくてはいけない。
妊娠すれば1年くらいはガンガン働くわけにはいかないし、見ているだけで大変そう。
この作品、2009年には、第13回手塚治虫文化賞マンガ大賞を、
2010年には、小学館漫画賞少女向け部門、さらに2021年には日本SF大賞を受賞。
そして、2005年には、単行本第1巻に対して「センス・オブ・ジェンダー賞」 特別賞、
2021年には、完結に際して同じく「センス・オブ・ジェンダー賞 」にて、
SOG Hall Of Fame Award 殿堂賞を受賞している。
まあ、時代がそれだけついてきたのだと思うのだけれど、
大奥を通して感じたのは、男女問わず有能は人は有能だし、そうでない人はそれなり。
「その人の考えが理解でき、共感できる」とか、
「その人についていきたい」
「言っていることとやっていることが一致している」
そういう人が、どういう世の中でも最終的には世の中を助けるということなのかな…と思った。
途中何度も「おなごが政を行うとは」という言葉が出てくるし、
今でもなお一部続く「長男信仰」とか、女性の非力さゆえの暴力描写も出てくる。
とはいえ、この中に出てくる将軍たちは皆、かっこよく、強く、優しい。
周りにいる老中たちも然り。
歴史のことはよくわからないけれど「この人って本当はこういう人だったのかな」とか、
「いつの時代も幸せの価値観は変わらないな」と改めて感じたりもした。
ま、本当のところ史実なんてめちゃくちゃ曲げられているだろうし、
私の好きな「忠臣蔵」でも、吉良さんは地元吉良町では愛されているし。
どの面からその人を見るかによって、その人の見え方は全然違ってくる。
これは、現代にも通じるに違いない
②原田泰造が昭和オヤジを熱演する「おっパン」
こちらは土曜日にはじまったばかりのドラマ。
同じく、マンガが原作です。
昭和の名残のある50代のサラリーマンを演じるのは原田泰造さん。
1で書いた「大奥」では、西郷どんを演じていらっしゃいました。
会社では「男だろ!」が口癖の原田パパは、昭和のモーレツ社員のよう。
「お茶を入れるのは女性社員の役割」とか、クレーム対応の際に女性を連れて行った方が柔らかくなるなど、時代錯誤な感じで怒鳴り、みんなからガン無視されています。
家では韓流に夢中の奥さん、漫画家のお姉ちゃんと引きこもりの息子の4人家族。
この引きこもりの息子はゲイのようで、その悩みから引きこもっている様子。
お姉ちゃんとお母さんはそれを黙認していて、遊びに来たゲイ仲間になんの差別もせずお茶を出してにこやか。
そんな様子を知り部屋に乗り込んだパパですが、
中にはゲイ仲間の友達が、息子にメイクをし、ネイルをしているところに出くわしてしまいます。
そして「一緒にいたらゲイがうつるかもしれないだろう! 早く帰れ!」と。
その言葉に友達はふふっと笑い「うつるって…風邪じゃないんだから」と一撃。
一方会社でもボーダーレスの波は来ており、
たまたま近くにいた男性社員がブラジャーをしていることにショックを受けます。
と…まだ半分しか見ていないのですが、「そんな時代か!」と驚いたり「いい時代になったな」と思ったり。
このドラマは、原田パパがボーダレスになっていく様子を描いていくと予想していますが、
今後も楽しみです。
③「おカマ」と言ってしまっていた中学時代
2本のドラマを見ていてまず反省。
実は中学時代、とある女性っぽい男子をからかったことがあります。
といっても私の性格なので率先してやっていたわけではなく、
一番たちの悪い「見ていただけ」の人間。
今でいう陽キャの男子がその子に当時流行っていた「カーマは気まぐれ」を歌いながら
「お前カマだもんな」と言う様子に、何も注意をしなかったり、
グループでも気の強い子が「だってMくんはカマじゃん。うつったら大変」と冗談交じりに言っていたことを、
何も注意せず見ていました。
今考えても、Mくんは背も高く、がっちりはしていましたが、仕草は女性らしく、歩く腰つきは女形のようでした。
そしてとても繊細で優しかったような記憶があります。
何年か前、とんねるずのキャラクターが問題になった際にも、
真っ先に思い出したのはMくんのこと。
あの昭和の時代、Mくんも悩んでいたのかもしれないと思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
実際に彼がそういう方向性にあったのかは、今は知り得ませんが、
もしそうだったとしたら、然るべき合う環境や友達と出会い、幸せに暮らしていることを望みます。
④どこまでこちらが気を遣わないといけないのか問題
とはいえ、考えさせられたり「ちょっとそれは」と思うこともあります。
以前、LGBTQに力を入れている企業さんと、何年かお仕事をしていました。
その会社は自己申告でトイレを利用でき、制服も選べました。
関わっていたのは5年以上前なので、その時はかなり新しく感じましたが、
そういう打ち出し方をしているので、全国から就職を希望する学生が集まったそうです。
カミングアウトして、社会人になりたい子、
もう家族に嘘をつきたくないから、環境を変えたい子、
そういう学生や中途採用の人が多かったようです。
ちなみに、私はLGBTQについて、特にこうという考え方はなく、
「みんな人間」というように考えています。
どういう理由で「私は男性が好き」「私は女性が好き」と傾向が分かれるのかは、
遺伝子のせいなのか、環境のせいなのかはわからないのですが、
「りんごが好き」「バナナが好き」という程度のことだと思っています。
まあ、これは私の周りに該当する人がほぼいないから、言えることなのかもしれませんが。
そんな中で、社長のお話を伺っていて「え、そんなことまで?」と思ったことがひとつあります。
それは差別用語について。
さすがに今の時代「おかま」とか「おなべ」という言葉がよくないのはわかるのですが、
「レズ」はダメで「ビアン」はいい、ということが全然わかりませんでした。
私は当事者じゃないから、その違いがわからないだけでしょうか。
こちらには「女性同士が好きなんだね、私はイケメンがいいけど」という認識のみ。
「レズ」と呼んでも「ビアン」と呼んでも、私の中で差別しているつもりはありません。
だからこそ「そこまで、こちらがその界隈について勉強しなければならないのか?」
という不条理さを感じました。
私が当事者じゃないから、わからないのかもしれません。
でも…なんだか、もやもやする。
これを聞いた時からずっとわからなくて、私が悪いのかなと思ったり、
「こちらが歩み寄らないといけないのかな」と思い、
でも「歩み寄る」という言葉を選ぶ自体、私が心の底では差別や区別をしてるのか?と思ったり。
最近よく聞く精神疾患についても、同じような感想を持っていて
「私、病気なんだから、みんな優しくしてよ!」
と声高にアピールする人や、もはやビジネスにしてる人もいますが、
「ちょっと気が弱いので、急にできなくなることがあるかもしれません」
と最初に伝えておく人もいるでしょう。
事象は同じですが、伝え方やその人の言葉や言動が、結局要になるのかもしれないなと、
これを書きながら考えています。
現在、LGBTQの割合を調べてみたところ、国によって調査方法が違うゆえ、
幅広い数字にはなっているけれど、3~10%程度とのこと。
まあクラスに1人か2人と考えると、結構多いのかもしれません。
娘の制服を買いにいった時も、ズボンとスカートが選べる学校も多かったですし、
そんな娘には「もし恋愛対象が女性だったら、都会に行った方が楽だから言ってね」
と伝えてありますが、制服の件で「寒いからズボンにしたい」と言われ、
とっさに「LGBTQに間違えられたら嫌だ」と思った私は、やはり心の中で差別をしているのかもしれません。
たかが1時間で、しかも4000文字程度のブログで結論が出る問題ではなく、
だからこそ、あーだこーだみんなが言っているわけですが、
どちらもフラットに考えられるようになり、そして「嫌だ」と思うことはスルーできる人が増え、
嫌なことを他人にしないよう、心がける人も増えたらいいなと思っています。
書きたいことがたくさんあったはずなのに、
結局何も書けなかったように思います。
それほど、難しい問題なのだと改めて実感した時間でした。
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