プロフィール&webライターの増田有香です。
昨日、12/14日は「赤穂浪士討ち入りの日」。
小さい頃、年末近くになると、必ずやっていた忠臣蔵。
父をはじめ、おばあちゃんの家に行くと祖父が熱心に見ており、
「同じ話なのに、何がそんなに面白いんだろう」
と思っていました。
ご存知のように、最近はなくなった2サスを追いかけ、
主にBSでサスペンス探索をしている私ですが、
忠臣蔵一挙放送のCMがずっと流れていて気になり、
「いつか見よう」と思って録画しておいたんです。
そんな時、私が以前講座を受けさせてもらった、
語り部の田中ふみ枝さんという方が、
討ち入りに近い12月にあるお話会を開催されたことを知りました。
なんと、最後まで赤穂浪士を脅かせた、清水一角さんの話で、
会場は、清水さんの故郷である、愛知県吉良。
こちらはFacebookで知ったので、コメントが多数。
その中には、清水一角のことや赤穂浪士に対して、
「あれはこうですよね~」「ここがよかった」と熱く語る方ばかり。
それがちょっと羨ましかったのと、
「イヤだ私、何にも知らない! …うん、今だ!」
と、その瞬間から録画を再生したのです。
もうね…
ちょっと見ようと思ったのが結局12時間ほど見ちゃいました。
ということで「忠臣蔵についてほぼ知識ゼロの人間が見る忠臣蔵」
について感想を書きたいと思います。
ファンの方には無知識ゆえ失礼な表現があると思いますが、
こちら初心者ゆえ、どうぞお許しくださいませ。
1.とにかく豪華なキャスト!
2サス常連も、時代劇の大物もズラリ
調べたところ、忠臣蔵関係のドラマや映画って、日本に80本ほどあるそう!
それだけ多くの人に愛されているということですよね。
私が見たのは「テレビ朝日開局45周年記念企画」で2004年のもの。
開局記念ということで、秋クールの連続ドラマとして、
10回放送したものを、12日~14日(討ち入りの日)の3日間で分けてオンエア。
つまり1日4時間くらいあります。
気になるキャストは、
浅野内匠頭に、セクスィー部長こと、沢村一樹さん。
大石内蔵助は、将軍&愛知の星、松平健さん。
そして吉良上野介は、娘も私も大好きなおじさま♥伊東四朗様。
でも…まず寂しかったです。
約20年前のことなので、仕方ないとは思うのですが、
もう鬼籍に入られた方ばかり。
大石内蔵助の奥さま、りく役の田中好子さん、
浅野内匠頭の母親役の、野際陽子さん、
堀部弥兵衛役、佐野浅夫さん、
千坂兵部役、夏八木勲さん、
徳川綱吉役、津川雅彦さん、
天野屋利平(影の味方)役、藤田まことさん、
大野九郎兵衛役、石田太郎さん。
書いているだけで沈んできました…。涙
と、気分を変えて、他の豪華キャストも紹介。
大石主税…山崎裕太(あっぱれさんま大先生の有名子役)
阿久里(瑤泉院)…櫻井淳子(ショムニのお色気担当)
片岡源五右衛門…羽場裕一(ミステリーでは犯人だけど、今回は気の利く家臣!!!)
大高源吾…石丸謙二郎(世界の車窓からの方、筋肉自慢!!!)
吉田忠左衛門…寺田農(ミステリーでは影の悪役だけど、今回は従順な家臣!!)
寺坂吉右衛門…梨本謙次郎(2サスにめちゃ出てる)
堀部安兵衛…宇梶剛士(あまり悪役じゃなかった!)
赤埴源蔵…永島敏行
不破数右衛門…寺島進
岡野金右衛門…要潤
小山田庄左衛門…高知東生
奥田孫太夫…大出俊
勝田新左衛門…北原雅樹(お笑いコンビとして人気だった、グレチキの方)
前原伊助…志村東吾
清水一角…松重豊(今は孤独のグルメな人!)
多門伝八郎…片岡鶴太郎
柳沢吉保…中原丈雄
荻生徂徠…橋爪功
脇坂淡路守…村上弘明(特別出演)
加古川本蔵…平泉成
戸無瀬…戸田恵子
小浪…前田亜季(歌舞伎役者の奥さんの前田愛ちゃんのお姉さん)
垣見五郎兵衛…江守徹
土屋主税…北大路欣也
浮橋太夫(京都の芸者)…池上季実子
村上喜剣…金田明夫
お島(浪士の女)…美保純
お艶(図面盗む女)…前田愛(今や歌舞伎役者の奥さん)
政五郎…西田健
なみ…萬田久子
塩山伊左衛門…菅田俊
八重(浪士の奥さん)…中山忍
宝井其角…高橋長英
ナレーション…奈良岡朋子
※wikipediaより、敬称略
誰でも知っていそうな方ばかり残しましたが、それでもこの豪華さ!
池上さんや美保純さんも、ちょこっと出ただけでもインパクト大。
萬田さんに至っては、3分しか出ていないのに、ずしーんと来ました。
私の大好きな伊東四朗様も、これ以上の嫌なジジイはいないほどの好演。
はらわたが煮えくりかえりそうな言葉と表情!
夫にLINEで「吉良許せん!」と送り、
三河担当が多かったことから「まあまあ、あれは史実とは違う物語だし、
西尾の人は吉良さんのこと神様みたいに思ってるよ」と慰められ、
それでもあまりの熱演に
「鴨さん、次の『おかしな刑事』では殉職してしまえ!」
とまで思いました(ドラマ違い…)
また、私にとって光っていたのは、2サスでは100%犯人の、
羽場裕一さんの演技。
浅野内匠頭の一番の家臣なんですが、これがもう気が利く、仕事が早い!
やはり劇団出身だから、台詞まわしにもパンチが効いている。
ものすごい存在感でした。
ということで肝心なお話と感想。
2「忠臣蔵」のストーリーは、
これだけで終わるシンプルさ。
本当にフリークの方には申し訳ないのですが、
忠臣蔵全く知らない方、しかも小学校レベルでとにかく簡単にすると
①地方のえらい人(浅野内匠頭)が、都のえらい人(吉良上野介)に、言われのない嫌がらせを受ける
↓
②ある日江戸城での大切な日に、さらに嫌がらせを受け、吉良を斬りつける(かすり傷)※松の間の事件
↓
③罰として切腹
↓
④それを聞いた家臣が怒り狂い、1年半後の12/14に討ち入り
書きながら「ファンに殴られる」と思いつつ、幼稚園でもわかるようにしてみました。
でもそれを言うなら
シンデレラは、「いじめられた美しい少女が、王子様と幸せになる話」だし、
タイタニックは「大きな船が沈む話」だし、
結局名作というもの、長く続くものというのは、シンプルなわけですね。
だがしかし!
有名な討ち入りに行くまでが、まあとにかく長いのなんのって。
①~③は2時間ほどでサクサク進むのに、④までは8時間!
「討ち入り始まったら誰か教えて」と言いたくなったほど。
でも、討ち入りを今か今かと狂おしいほどの気持ちで待っていたのは、
当時の赤穂浪士たち。
大石内蔵助は、確かに
「討ち入りは必ず行う。だが時を待て」とはいったものの、
その舌の先も乾かぬうちに、京都祇園で女と酒に明け暮れる始末。
これは「敵を欺くにはまず味方から」ということだったのだが、
浪士たちは米屋やそば屋として身分を偽りながら様子見しており、
今か今かという気持ちは、私とは比べものになりません。
忠臣蔵の話は、前述のようにシンプル。
しかし、そこに行き着くまでの、お互い(敵)の腹の探り合いや、
それぞれの事情が変わるごとに、仲間への裏切り行為ではないかと悩む姿、
登場人物が変わるたびに「わかるわ~」とか「理解できん!」と独りごち、
命って何だろう、仕事って何だろう、女って強いよなあと考えながら見るのが醍醐味。
何より、
「討ち入ると言ったのに、それを忘れたかのように見える」
そんな尊敬も信頼もあるはずの人に対し、
最初の言葉をどこまで長く強く信じ続けられるのか、
そんな、人間の弱さと強さを見ながらも「武士の粋」というものを感じました。
私の好きなこんな場面、あんな場面
たぶん「忠臣蔵」を見た人なら「かっこいい~」と誰もが思うのが、
垣見五郎兵衛のシーンであろう。
今回は、江守徹さんが演じていました。
このシーンはかなり終盤。
ようやく討ち入りのおおまかな日程が決まり、一同はある宿坊へ集結。
しかし関所がある時代、彼らはニセの名前の札で宿泊をしていました。
そこに本物が登場!
私は「逃げて逃げて!もう斬っちまえ」とあおっていましたが、そこはマツケン様。
「俺が本物だ」「いや、俺が本物の垣見だ」というつばぜり合いの後、
「札を見せろ」という本物の垣見に、袱紗に包まれた札を渡します。
ところがそれを広げると、札はなんと白紙。
垣見は「ほらニセものじゃないか」とマツケンを見るのですが、
ふと袱紗に目をやると、そこには浅野家の紋が!
全てを悟った垣見は「なるほど、この札は本物でございますね。大変失礼しました」
と頭を下げ、その上で本物の札を出し、
「私はほんのちょっと寄っただけですので、こちらを差し上げます。
どうぞ、お志叶えられますよう」といって去っていくのです。
書いているだけで鳥肌たつ!
かっこいい~。なんて粋なの~
普段江守徹さんを意識したことなかったけど、かっこよかったわあ。
また、それぞれの奥さまや女たちが、
愛する人とそれぞれの別れを告げる場面もよかった。
得に印象に残ったのは、婚姻の約束をしていた、大石主税と小浪の話。
いわゆる「知り合い同士」の結婚で、松の間の事件が起こるまでは友好関係だったが、
松の間の事件の際、小浪の父親(平泉成)が浅野の切腹に対し、
間接的に一端をになってしまったため、破談。
(ここは説明が長くなるので、興味がある人は調べてね~)
実は、子どもの頃から主税に思いを寄せていた小浪。
何とか結婚できるよう、母親(戸田恵子)と何度も何度もお願いに行く。
その間に父親は、切腹の一端になったことで責任を取って浪人に…。
これを最後にとお願いに上がるも届けられず、ついには母子心中を…
と思ったその時、父親が現れ「命をかけてお前たちを守る」と告げます。
その言葉どおり、父は日々祇園の花街に出向き、
影ながら大石内蔵助に危険が及ばないかを見張ります。
そして、ふいに襲われたところをかばう父。
朱く染まりゆく身体を横たえながら、
「どうか主税さまと小浪を一緒にしてください…」と伝え殉死します。
内蔵助は遺言どおり祝言を挙げることに。
とはいえ、討ち入りは決まり、限られた日にちしか一緒にいられない二人。
それでも、うれし涙でくれる若い二人の姿を見て、こちらもほろり。
女性たちのお別れはさまざまでした。
赤ちゃんが生まれたばかりなのに笑顔で見送る妻、
涙ながらに「幸せでした」と話す妻、
「自分がいたら後戻りしていまうかも」と自害する母。
どれもどれもうるうると来てしまいました。
でも…
そこではたと疑問。
「こんなに大切な人が悲しむんだから、討ち入り辞めない?」
自分のやりたいことをやる!
今も昔もそれが人生!
これはまあ、私がこんな平和ボケな世の中にいるからでしょうね。
でもそんなに悲しませてもするものなのかな、と疑問を持ちました。
加えて、命の重さに差があるのにも、疑問があります。
武家社会だったとはいえ、殿様のためなら命を粗末にしてもいいの?
吉良の首を取るためなら、お付きの浪人や武士はバッサバッサ斬っていいの?
仕事やら家をほっぽらかしていいの?
まあ、私には理解できないことこそ、当時の美学なのかもしれないけれど、
命の重さについては、若干納得できずにいます。
さて、皆さんがよく知るストーリーは史実ではなく、
「仮名手本忠臣蔵」が元になっているとのこと。
よくよく調べてみると「実はこうだった」という話がズラズラ出てきます。
例えば…。
・浅野はそもそも短気だった
・浅野は病気を患っていた
・吉良は地元では名士だった
・いやいや吉良は嫌われていた
・吉良は礼儀を教えていただけ
などなど。
こういうことを総じて、あるネット民が
「もし現代に例えるなら、
地方の中小企業の社長が、銀座のパーティーに来たものの、
しきたりや礼儀がわからなくて、年配の社長が注意したら、
逆ギレして殴り、その結果解雇となったが、
中小企業の社員やバイトが根に持ち逆襲した」
と書いていたのだが、もしかするとそんなことかもしれません。
ただ、浪士たちが「これがやりたい」
ということは、命をかけてやりたかったこと。
そして、家族は浪士たちを愛するがゆえに、
自分が辛くてもそれを叶えてやろうと思った。
そんなふうに考えると、少しはわかってくる気もする。
いうならば、
「その望みが叶えられないのであれば、自分は生きている価値がない」
という感じでしょうか。
私事だが、私は学生の頃、東京に進学しようと思っていた。
しかし母は反対。理由は経済的理由ではなく「あなたには無理だから」
だった。
確かに当時の東京は今の何倍も地方と差があり、情報も少なかった。
母が心配したのは当然であろう。
しかし母の「行かせたくない」という気持ちはよほど強かったのだろう。
今となると「よく見付けてきたよなあ~」という事例を見付けてきた。
一人は、東京に行ったことでヤクザに目をつけられ、薬中毒になった
一人は、同じく悪い男にひっかかり、全身入れ墨を入れられた
こんなの「見つけよう」と思ったって引き寄せられない。
母は後で「それでも行きたいって言えば良かったでしょ」
と言うけれど、地方の18歳、しかももともと気弱である。
そんな事実「だけ」を突きつけられて、なぜ行けようか。
この悔しさ、夢を持てない辛さ、どこにもやりようのない怒りは、生涯忘れられないと思う。
例え薬中毒になろうと(いやはやそれはアカンが)、
「辛かったら戻ってこればいいんだから。一度やってみな」
と、母に送って欲しかった。
結果、帰ってきたとしても自分はきっと後悔をしなかったと思う。
なぜなら自分で決めたことだから。
この「当時遂げられなかった思い」は、今も私の心残りとなっていて、
そこから結局長い反抗期が始まった。思い出したくない黒歴史を生んだり、
彼氏の家に転がり込んで、帰らなかったことも数多し。
私が今だに東京に憧れを持ち、できるだけ長くいたいと思うのは、これが理由だ。
そして、いくら今からもし住んだとしても
「あの時、あの時代、あの年齢でしか感じられなかったもの」
は、一生、二度と手に入らない。
と、自らに置き換えて考えると、
「やりたいことを自分の責任でやる」
ということは、一番幸せであり、今も昔も変わらないのではないだろうか。
浪士たちを見守り、
「もう二度と会えない」という覚悟で見送った昔の人たちは素晴らしいし、
命をかけてまで「これをやりたい」という熱を持っていた人達を、
羨ましいとさえ思ってしまう。
この現代「命をかけてまでやりたい」ことはあるだろうか?
戦地に赴くというのは別として命には関わらないだろう。
もし、「こういう仕事につきたい」と反対されても
せいぜい「儲からない」「食べていけるの」というケチがつくくらい。
まあ、それだけ世の中が平和になった、ともいえるが、
令和のこの世を見て、浪士たちはどう思うのだろうか。
「穏やかで楽しい」と思うのか
「命をかけたいことがない」と思うのか。
というわけで、忠臣蔵のもろもろから、人間の生き方までつらつら書いてきましたが、
こちら、80もの作品があるだけに、見比べてみるのも楽しそう。
ちょうど12月ということもあり、BSで「瑤泉院からみた忠臣蔵」とか、
中村吉右衛門バージョンの忠臣蔵もあるそうなので、
それぞれも楽しみたいと思う。